有名な例がキリンの首であろう。高いところの葉を食べるのに有利だったから長い首を持った個体が生き残った、と説明される。ただし、選択圧は一つだけとは限らない。長い首は辺りを見回すのにも有効である。一方で、それを維持するための負担がある。首を支えるには大きな体が必要で、そのためには食料も多く必要になる。脳まで血液を送るための強靱な心臓と、逆に鬱血しないための脚の特殊な構造が必要であるが、これらは首を長くしない方向の選択圧である。キリンは600万年かけて4mの首を持つに至ったが、一年あたりで言えば1,000分の6ミリにすぎない。ダーウィンフィンチで見られるように、選択圧は双方向に働き、長くなったり短くなったりしながら今日のキリンになったと考えられる。
ダーウィンフィンチ
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1970年 - 80年代に観察された自然選択の例。長い乾期によってダーウィンフィンチが主食にしていた木の実が少なくなると、堅い実を食べるのに適した大きな嘴を持った個体が選択的に生き残った。その後、大雨で食料が増えると、大きな嘴を持つ個体は(体の維持などの点で)不利となり、全体の平均的な体格は縮小する傾向を示した。単純に体格や嘴の平均値が変化するだけではなく、性選択の影響も同時に受け、複数の小グループに収斂する様子も観察されている。
オオシモフリエダシャク(英Peppered moth Biston betularia)
オオシモフリエダシャクはイギリスの蛾。19世紀に観察された、自然選択の有名な例としてよく用いられた。工業暗化という言葉でも知られる。工場の煤煙で樹木が黒ずんだため、黒っぽい個体だけが生き残り、その後環境が回復すると白色の個体が増えたという研究である。19世紀半ばから50年間で、黒色個体の数は2%から98%にまで増えたとも言われる。この現象はアメリカでも見つかっている。一方で、蛾の黒変病を誤認したのだとか、煤煙に含まれるマンガン化合物を摂取したからだ等の批判もある。創造論者のジョナサン・ウェルズは著書『進化のイコン』でこの蛾の説明に用いられる写真を詐欺的だと批判した。死骸をピンで木に張りつけた捏造写真であると指摘したのだが、その写真は自然状態を説明する物でなくただ単に白色個体と黒色個体を並べて見比べるために撮影されたにすぎない。また、黒い個体と白い個体ははじめからいて、その個体数が変化したにすぎないとも批判される。現代の進化の定義では、そのような性質の頻度の変化も進化と見なすが、確かにこの例は進化を実証する説得力のある例とは言えない。しかし自然選択と言うメカニズムの実例ではある。
昆虫の薬剤抵抗性(薬剤耐性も参照のこと)
1987年5月にアーカンソー州で見られた綿花につく蛾はピレスロイドの散布で6%しか生き残れなかった。数世代を経たあとの同年9月には61%の蛾が生き残った。有機リン酸系、ピレスロイド、DDTなどに抵抗性を持つ蛾、ハエ、蚊が見つかっている。世界各地で発見されているDDTに耐性を持つハマダラカは、1960年代にアジアかアフリカのどこかで誕生した一匹の突然変異体の子孫ではないかと考えられている。昆虫の殺虫剤への抵抗はダーウィン自身も指摘していた。